帰化申請で不許可になりやすい事例・注意点

 帰化申請を行うときは、申請前に事前に法務局に相談することをお勧めします。その際に、これまでの在留状況や親族関係、税金、仕事の事などをある程度詳細に確認され、許可の可能性について判断していただけます。許可の可能性が低いようであれば、あと何年申請を待った方が良い、とアドバイスしていただけます。

 したがって、法務局で事前相談を行い、申請書類を提示してもらい、申請までこぎ着けて申請受付けされたのであれば、許可の可能性は高いです。申請を控えるよう指導される方、申請を受け付けてもらえない方はけっこう多いです。

 【参考:法務省HP】帰化許可申請者数の推移

 しかし、稀に、より詳細に審査が進む段階で、懸念事項が発覚し、また、不許可事由が新たに発生し、不許可となることがあります。帰化申請が不許可になるということは、証明書取得費用や翻訳費用、書類収集労力、すべてが無駄になってしまいます。

 そのような事が起きないよう、あらかじめ、不許可になるような事由を除去できるよう、日々、気を付けながら生活していきたいものです。

 以下は、不許可理由となりやすい事例です。ご参考になれば幸いです。

【過去の犯罪歴】

 これが最も厳しく判断されます。これらのことは、申請前には分かっていることですので、正直に法務局職員に申告し、いつくらいであれば申請可能なのかを確認します。しかし、殺人、麻薬等の重犯罪はなかなかGOサインが出ないようです。

 過去にオーバーステイ歴のある方は、在留特別許可後10年以上経過する必要がありましたが、帰化許可は、年々審査が厳しくなっており、最近では15年以上経過するよう指導されることがあります(過去のオーバーステイの理由やその他の事情との総合判断によります)。退去強制されたことがある方は20年以上経過が必要です。

【法律違反】

 本人が認識していない法令違反が審査の段階で発覚し問題になることがあります。例えば、自営業者の方などは、様々な法令を遵守して営業を行っている必要がありますが、営業に関係する法律は多数あります。労働法、税法、社会保険法、各種許認可、届出等々。

 全く法令違反がないか?を申請前に確認することは、とても大変で難しいことですので、考えられる可能な限りでの遵守すべき法令を、申請前にあらかじめチェックし、漏れがあれば対策を講じます。

【税金・年金】

 税金・年金についても、帰化申請前にその納付状況はすべてわかっているはずですので、未納、滞納がある場合は全て納めてから申請に臨みます。また、扶養人数が実態とそぐわない場合は、直ちに修正申告を行って、適正な納税をしてから申請します。自営業者の方の場合は、様々な税金がありますので、税理士と相談の上、しっかりと申告、納税を行ってから申請します。

 【申請書類とインタビューでの回答の齟齬】

 法務局からのインタビューに失敗して不許可になったということはあまり聞きませんが、法務局は事前に様々な情報を入手して(過去の日本在留状況、入管への申請資料や出入国歴、身分事項、素行など)、質問事項を決定、用意してきています。したがって、法務局の情報とインタビューで答えた内容が、全くもって一致していないようですと、当然、審査官の心証が悪くなりますので、不許可方向に判断されるかもしれません。

 したがって、インタビューでは、嘘は厳禁です。記憶が曖昧なことは、記憶が曖昧だとしっかり伝えるようにします。

【申請後の事情変更】

 帰化申請は、ご存知の通り、審査が1年~ほどかかります。当然、申請時とは状況が異なる事もあります。

 交通違反を犯してしまった。転職をした。収入が減った。引っ越しをした。海外出張が決まったなど。帰化申請時に提出した書類の記載事項で変更があれば、法務局担当者と相談の上、対処をします。

 帰化許可に不利な事情変更は、隠したくなりますが、正直に申告しなければなりません。したがって、帰化申請後は、穏やかに、何事も起こらないようにいつも通りに生活するのが最善です。

 上記、いろいろと説明しましたが、要するに、「素行がどうなのか?」と言う事です。過去の前科前歴、脱税、交通違反、インタビューと提出種類の齟齬(虚偽記載かどうか?)が問題になるということは、「この人は一体どのような人間なのか?危ない人ではないか?大丈夫か?健全な方なのか?」ということに他なりません。

 日本人になるという事は、海外に行かれた時に、海外で凶悪犯罪などを犯してしまえば、今度は「本日未明、日本国籍の○○○○が・・・・・」とニュースが世界に流れてしまいます。また、「○○革命戦線が日本人の○○○○氏を人質にし、金銭を要求しています。」となれば、(日本政府が)助けに行かなければなりません。そう考えれば、「帰化申請者がまっとうな人間なのか?」を厳しくチェックするのもやむを得ないことだと思います。